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事例紹介製造業
カルビー株式会社「新商品企画ワークショップ」
学生との“忖度なし”のガチンコ共創
カルビー株式会社「新商品企画ワークショップ」
🏭 製造業
公開日:
「なぜ若者はポテトチップスを手に取らなくなったのか?」

カルビー次世代商品開発部が挑んだ、学生との“忖度なし”のガチンコ共創

「最近の若者はスナック菓子を食べないらしい」

「調査会社の結果は『美味しい』ばかりで、買わない本当の理由が見えてこない」

100年続く国民的菓子メーカー、カルビー株式会社。その社内で、ある危機感が生まれていました。それは、若年層の「スナック離れ」と、既存のマーケティング調査では見えなくなってしまった「若者の本音(インサイト)」です。

今回、その課題を突破するために導入されたのが、CourseVALUが提供する**「学生×企業」の共創ワークショップ**。

しかし、それは単なる「学生のアイデアを聞く会」ではありませんでした。あえてビジネスの厳しさを突きつけ、社員と学生が対等に火花を散らす──。

結果として、学生満足度8.38、社員推奨度8.60という高評価を叩き出した本プロジェクト。その裏側には、採用・事業開発・教育のすべてに通じるヒントがありました。

1. 課題:市場調査の限界と「忖度」の壁

カルビーのご担当者様(次世代商品開発部)が抱えていた悩みは切実でした。

「お金を払って依頼する調査インタビューでは、参加者がどうしても企業に気を使ってしまい(忖度)、『良いこと』しか言わなくなってしまう。私たちが知りたいのは『なぜ買わないのか』『生活のどこにスナックが入る余地がないのか』という、耳の痛いリアルな現実なんです」

そこでCourseVALUが提案したのは、**「仮想敵」**の設定です。

学生をお客様扱いするのではなく、「若者のリアルな声が聞こえない現状」を共通の敵として設定。社員も学生も「ワンチーム」となり、忖度なしで戦うフィールドを用意しました。

2. ワークショップの全貌:予定調和を壊す「3時間の設計図」

集まったのは、早稲田大学・慶應義塾大学を中心とした18名の学生たち。

彼らのクリエイティビティと本音を引き出し、ビジネスの現場で通用するアウトプットへと昇華させるために、緻密に計算された3時間のプログラムが実施されました。

【Phase 1】 マインドセット:あえて「プロの現実」を突きつける

冒頭、カルビー石田様(次世代商品開発部)から語られたのは、キラキラした成功談ではなく、ヒット商品『ポテトデラックス』が生まれるまでの泥臭い開発秘話でした。

  • 逆境からのスタート: 台風被害による「ポテトショック(ジャガイモ不足)」という絶望的な状況が開発の契機だったこと。
  • 品質と味のジレンマ: 「美味しさ」を追求すると「工場での品質管理(塩分濃度)」が難しくなるという、リアルな板挟み。
  • 4桁枚数の測定: 最適な厚さを決めるために、手作業で数千枚のポテトを測定し続けた執念。

「ただ面白いアイデアを出せばいいわけではない」。ビジネスの厳しさ(制約条件)を最初に共有したことで、学生の目の色が変わり、当事者意識が芽生えました。

【Phase 2】 チームビルディング:仮説とリアルの「ズレ」を楽しむ

通常のアイスブレイクとは異なり、ここでも「マーケティングの視点」を取り入れました。

  • 「カルビー社員の仮説」vs「学生のリアル」

    社員が持っている「今の大学生はきっとこうだろう」という仮説(バイアス)を提示し、それに対して学生が「いや、実際はこうです」とフィードバックを行うセッションを実施。

    • 社員: 「若者はスナック菓子をパーティーで食べるはず」
    • 学生: 「いえ、パーティーもしないし、手も汚れるからスマホ見ながら食べません」

      この**「認識のズレ」**が可視化された瞬間、会場の空気は一気に熱を帯びました。

【Phase 3】 問いのデザイン:「欲しいもの」ではなく「課題」を探る

いきなり解決策(アイデア)を考えさせることはしません。CourseVALU独自のフレームワークを用い、アイデアの源泉となる「問い」を定義します。

  • Question Design(問いのデザイン)
    • Example: 「新しいカーナビをどう作るか?」ではなく、**「移動の時間をどうデザインするか?」**と考える。
  • 人生史からのアプローチ

    学生自身の「過去・現在・理想(夢)」を書き出し、そのギャップから生まれる欠落感や渇望を分析。そこから「なぜ今、若者の生活にスナックが入る隙間がないのか?」という本質的な問いを導き出しました。

【Phase 4】 ガチンコ共創:社員も「審査員」ではなく「プレイヤー」

最後は、社員も各チームに入り込み、共に汗をかく共創タイム。

会場にはカルビーの商品が山積みされ、**「お菓子を食べながら議論する」**というリラックスした環境(心理的安全性)の中で、忖度ない意見が飛び交いました。社員は審査員としてではなく、一人の「悩める開発者」として学生に向き合いました。

3. 成果:学生と社員、双方に起きた変化

濃密な3時間を経て、双方に大きな変化が生まれました。

Students(学生の変化):アイデアソンから「ビジネス」へ

受講後のアンケートで目立ったのは、「楽しかった」以上に**「企業の信念へのリスペクト」**でした。

  • 「自分の知らない世界ですごいこだわりと信念を持って取り組んでいる姿が見れた。想像力と現実性のバランスが良い勉強になりました」(早稲田大学 2年)
  • 「社員さんと一緒に商品企画を考えるというのは今までにない体験。実際に商品企画をしている人の思考プロセスに触れられ、視野が大きく広がりました」(亜細亜大学 2年)
  • 「会社が気になるから受けるというより、知らずに受けてもっと気になるようなデザイン。1人でも多くの友人に勧めたい」(日本女子大学 2年)

単なる「お菓子メーカー」という認識から、**「プロフェッショナルが働く場所」**へと認識が変化。深く企業を理解した「ファン」へと変貌を遂げました。

Employees(社員の変化):強烈なリバースメンタリング

一方、参加した社員(商品開発部)の方々からも、驚きの声が上がりました。

  • 「20代に対するバイアスが、知らないうちにかかっていたことに気づかされました」(社員アンケートより)
  • 「学生の生活スタイルの中に、スナック菓子が入り込めていない現実を肌で感じました。これは調査レポートだけでは分からない温度感です」(社員アンケートより)
  • 「若年層の意見や動向がダイレクトに分かる。新規事業だけでなく、既存ブランドチームにこそ有効的だと思った」(社員アンケートより)

社員満足度は8.60/10。

普段接することのない「優秀かつ本音で話す学生」との対話は、社員自身の固定観念を壊す**「リバースメンタリング(若手が年長者に助言する)」**の効果も生み出しました。

4. 結論:採用×事業×教育の「三方よし」を実現する

今回のプロジェクトは、単なる「事例紹介」にとどまらない価値を示しました。

  1. 【事業開発部へ】

    調査会社では拾えない「一次情報(本音)」を獲得し、既存ブランドの突破口を開く。

  2. 【採用人事部へ】

    説明会では出会えない優秀層と早期に接触し、深い体験を通じて強力な「母集団形成」と「動機づけ」を行う。

  3. 【大学・教育関係者へ】

    正解のないビジネスの現場に触れさせることで、学生のキャリア観を成熟させる「PBL(課題解決型学習)」の場となる。

「学生のアイデア」を消費するのではなく、学生と共に「未来」を創る。

CourseVALUは、企業の課題解決と次世代の育成を同時に実現する、新しい共創の形を提案します。

  • 実施: 2025年9月
  • 参加学生: 18名(早稲田大学、慶應義塾大学 他)
  • 学生満足度: 8.38 / 10
  • 社員推奨度: 8.60 / 10