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「自社の魅力」を語らないほうが学生に深く理解される? 3年生向けの「いつもの資料」が1,2年生には響かない理由|早期接触総合研究所
「自社の魅力」を語らないほうが学生に深く理解される? 3年生向けの「いつもの資料」が1,2年生には響かない理由|早期接触総合研究所
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現場を覆う「違和感」の正体
ー 武器と場所のミスマッチ ー

「何か、違う気がする」

大学1,2年生、いわゆる低学年向けのキャリアイベントやオープンカンパニーに参加された人事の方から、最近よくこのような相談を受けます。

自社の強み、業界でのシェア、独自のビジネスモデル……。 3年生向けの採用説明会では学生が熱心にメモを取る「鉄板のスクリプト」を、情熱を持って話した瞬間、場の空気がスッと冷えるのを感じたことはありませんか?

彼らは決して礼儀知らずなわけではありません。しかし、そこには確かに「気まずい沈黙」が流れます。
話している人事担当者自身も、ふと我に返る瞬間があるはずです。

「そもそも、この専門的な話をまだ社会を知らない1年生が理解できるのか?」

「自分たちは、彼らに何を求めているのだろう?」と。

それでも、手元にあるのは「採用ピッチ」の資料だけ。結局、いつものように「我が社がいかに優れているか」を読み上げてしまう。 そして、学生の反応は薄く、手応えのないまま終わる。
これは、皆様のプレゼンスキルの問題ではありません。 「戦う場所(学年)」が違うのに、「武器(スクリプト)」が同じままであるという、構造的なミスマッチが起きているのです。

なぜ、彼らは「自社説明」で心を閉ざすのか

まず、この現象を精神論ではなく「技術的な課題」として解剖してみましょう。

大学1,2年生と、就活解禁後の3・4年生では、脳内のモードが全く異なります。 3年生が「選ばれるための正解」を探しているのに対し、1,2年生は「社会を知るための入り口」を探している段階です。

彼らがイベントに参加する動機は、非常にライトです。「まだ何もわからないけれど、とりあえず何か見てみよう」。その純粋な好奇心が原動力です。

そこに、企業側が採用モード全開で、「うちの会社はここがすごい」「求める人物像はこれだ」と迫るとどうなるか。 彼らは敏感に「就活の匂い」を嗅ぎ取ります。

「あ、これは『評価』される場なんだ」 「良いことを言わないと、見定められる」そう感じた瞬間、彼らの心理的シャッターはガラガラと音を立てて下ります。

さらに現代の学生にとって深刻なのが、「タイパ(タイムパフォーマンス)」の感覚です。 今の時代、売上規模や事業内容、福利厚生といったスペック情報は、スマホで検索すれば一瞬で出てきます。 彼らにとって、Googleで調べればわかる情報をわざわざ対面で読み上げられる時間は、「検索できない未知の体験」を求めて来たのに「既知の情報」を聞かされる、最もタイパの悪い時間なのです。


「説明」を捨て、「視点」を共有する

では、1,2年生に対して企業は何をすべきなのでしょうか?

極端な提言に聞こえるかもしれませんが、私たちは「自社の説明(Self-Promotion)」をやめるべきだと考えます。

誤解しないでいただきたいのは、会社について何も語るなという意味ではありません。「情報の押し売り」をやめるのです。 1,2年生に必要なのは、情報ではなく「体験」と「視点」です。ここで有効なのが、「社会課題の提示(Issue-Sharing)」という技術です。 具体的なトークの違いを見てみましょう。

【× 従来の説明(Self-Promotion)】

「当社は空調機器の分野で、国内シェアNo.1を誇ります。高い技術力が強みで、省エネ性能も業界トップクラスです」
(学生の心:すごいですね。でも、それってHPに書いてありますよね?)

【○ 視点の共有(Issue-Sharing)】

「なぜ今、世界の都市部で気温が上昇し続けているのか、その本当のメカニズムを知っていますか? 実は、私たちが快適になろうとすればするほど、外の気温が上がるという矛盾を人類は抱えているんです」
(学生の心:えっ、どういうこと? 知らなかった、聞きたい!)

そして、「私たちは、その矛盾を『風の通り道を作る』という独自の視点で解決しようとしている集団です」と語りかけるのです。

「一緒に考える」という新しい関係性

このアプローチには、明確な意図があります。

  1. 対等な関係の構築: 「企業 vs 学生(評価する・される)」ではなく、「社会課題 vs 私たち(共に挑む)」という構図を作ることで、彼らの警戒心を解きます。
  2. 独自のレンズの提供: 「へえ、そういう視点で世界を見ているのか!」という知的興奮こそが、彼らにとって最大の「魅力」になります。
  3. 探究心の着火: 完成された答え(自社の凄さ)を与えるのではなく、未解決の問いを共有することで、「もっと知りたい」「一緒に考えたい」という意欲を引き出します。

説明しないことこそが、結果として最も深い「自社理解」に繋がる。 これが、早期接触における逆説的な真実です。スペックを語るのではなく、「自社独自の社会の見方(レンズ)」を若者に貸してあげる。そうすることで、彼らの目の前の景色を変えてあげること。 これこそが、キャリア教育としての早期接触のあるべき姿ではないでしょうか。

次回予告:早期接触における「倫理」とは

さて、ここまで「説明してはいけない理由」についてお話ししました。
しかし、現場からは「では、説明をせずにどうやって魅力を伝えるのか?」「どこまで踏み込んでいいのか?」という、新たな疑問も湧いてくることでしょう。一歩間違えれば、それは「青田買い」という批判にも繋がりかねません。
そこで次回は、1,2年生と向き合う際に私たちが心に刻むべき「倫理(マナー)」について考えます。 彼らの未来を奪わないための、しかし企業の資産となる「誠実なアプローチ技術」について、深掘りしていきましょう。

早期接触総合研究所(運営:CourseVALU)

https://note.com/soukisouken