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こんにちは。早期接触総合研究所の研究員のSouです。
前回は、安易な会社説明がコミュニケーション不全を招くというお話をしました。
今回は、より実践的な対話の技術について掘り下げます。
よくある失敗シーン
キャリアイベントで、あなたのブースに学生が立ち寄りました。
少し話すと、大学2年生だとわかります。
「おっ、意識が高いな。有望株かもしれない」
そう思ったあなたは、場を盛り上げようとこう聞きます。
「へえ、2年生から来るなんてすごいね。大学ではどんなことに力を入れているの?」
学生は少し困った顔をして、当たり障りのないサークルの話をします。そして数分後、「勉強になりました!ありがとうございます!」と礼儀正しい笑顔を残して去っていきます。もう二度と戻ってこないかもしれません。
なぜでしょうか?
それは、あなたの質問が彼の思考を止めてしまったからです。
1. 無意識に「査定モード」になっていませんか?
教育の世界には、学習者を支援する2つのアプローチがあります。
①結果を評価する(総括的評価)
- 「何ができたか」を測る
- 例:最終面接、合否判定
- 学生の心理:「良く見せなきゃ」
②プロセスを支援する(形成的評価)
- 「今どう考えているか」を引き出す
- 例:インターンのフィードバック、低学年との対話
- 学生の心理:「自分の考えを整理したい」
問題は、多くの人事が低学年との立ち話(本来は②の場)で、無意識に面接(①)と同じ質問をしてしまうことです。
「ガクチカ」を聞いてはいけない理由
「学生時代に頑張ったことは?」という質問は、典型的な結果確認型です。
しかし、入学して間もない1・2年生に「成果」などありません。
この質問を投げられた瞬間、学生の脳内ではこんなことが起きます。
- 「実績なんてまだない……」
- 「すごいことを言わなきゃいけない空気だ」
- 「適当に合わせて逃げよう」
結果、表面的な会話に終わり、学生は**「自分の至らなさ」を突きつけられた不快感**だけを持ち帰ります。
これではファンになるどころか、自信喪失のきっかけを作っただけです。
2. 脳を「動かす」3つの質問技術
では、短い立ち話で、どう接すればいいのでしょうか?
必要なのは、実績を問う「審判」ではなく、思考の「足場かけ」です。学生に「この人と話すと頭が整理される」と感じさせる、具体的な質問の変換技術を3つ紹介します。
技術①:過去ではなく「今の違和感」を聞く
「何をしたか」ではなく、「今、何を感じているか」に焦点を当てます。
× NG: 「大学では何を頑張ってるの?」
◎ OK: 「今の大学生活で、一番『違和感』を感じていることって何かある?」
なぜ効くのか
「頑張ったこと」は取り繕えますが、「違和感(モヤモヤ)」は本音が出ます。
「授業がつまらない」「意識高い系サークルに馴染めない」。こうしたネガティブな感情こそが、その学生の価値観の源泉です。
そこを深掘りすることで、学生は自分の本音を言語化でき、知的な興奮を覚えます。
技術②:正解ではなく「思考実験」を促す
現実の行動ではなく、仮想の状況を設定して思考を遊ばせます。
× NG: 「将来やりたい仕事はある?」
◎ OK: 「もし一生お金に困らないとしたら、君は今の学部で何を勉強したい? それとも別のことをする?」
なぜ効くのか
まだ社会を知らない彼らに「やりたい仕事」を聞いても、知っている企業名を挙げるのが関の山です。制約を取り払った「もしも」の質問を投げかけることで、彼らの潜在的な興味関心が浮き彫りになります。
技術③:説明ではなく「気づき」を与える
自社の魅力を語るのではなく、学生が社会を見るための「レンズ」を渡します。
× NG: 「ウチはこんな事業をしていて、ここが強みで…」
◎ OK: 「君が普段使っているそのアプリ、どうやって儲けてるか考えたことある? 実は裏側で…」
なぜ効くのか
学生の身近な事象を入り口に、ビジネスの構造を解説します。
「へぇ、そうだったのか!」という発見体験を提供すること。企業説明をするのではなく、その企業ならではの視点で世界を解説してあげること。
これが、知的好奇心旺盛な優秀層に最も刺さります。
3. 実践:ブースでの「立ち振る舞い」を変える
最後に、物理的なアプローチも変えましょう。
低学年に対するブース対応では、以下のスタイルが有効です。
「対面」ではなく「横並び」
机を挟んで向かい合うと「面接」になります。
資料やホワイトボードを一緒に覗き込む横並びの配置を作りましょう。同じ方向を見ることで、心理的な壁が消えます。
「メモ」を取らせるのではなく「図解」してあげる
学生の話を聞きながら、あなたが手元の紙に図を描いてください。
「君が言ってる違和感って、構造的にはこういうこと?」と可視化してあげるのです。
その紙をプレゼントされた学生は、それを**「自分を理解してくれた証」**として大切に持ち帰ります。
一緒に「手を動かして」成果物を作る
学生の話を聞くだけでなく、一緒に何かを作りましょう。
例えば、簡単なワークシートでの思考整理、アイデアスケッチ、ビジネスモデルの図解など。
これは弊社CourseVALUがワークショップでよく行う手法です。重要なのは、その人自身ではなく、目の前の成果物に焦点を当てること。
「この図、ここはどう考えた?」
「このアイデア、面白いね。どうしてこう思ったの?」
成果物を介して会話することで、学生は自己防衛モードから解放されます。
「自分が評価されている」のではなく、「自分の考えが形になっている」という感覚が生まれるからです。さらに、ものを作る行為には、立場の上下を消す力があります。一緒に手を動かす瞬間、人事も学生も「共同作業者」になります。この短い時間の中で、面接では絶対に出てこない深い本音や思考のクセが見えてきます。

むすびに
早期接触において、人事に求められるのは「優秀な人材を見抜く目」ではなく、まだ形の定まっていない若者の思考に、適切な問いと足場を与え、思考をドライブさせる「教育的な関わり方」です。
「あの企業の人と話したら、なんか自分が賢くなった気がする」
ブースを去る学生にそう思わせることができれば、成功です。
その知的興奮の記憶は、3年生になった彼らを、必ずもう一度あなたの元へ連れ戻します。
次回は、こうした個別の接触を点ではなく「線」にするための仕掛け、学習コミュニティの形成について。インターンでも選考でもない、第3の接続場所の作り方を提言します。